今月いっぱい、スカイレールサービス

JR山陽本線瀬野駅から伸びるスカイレールこと広島短距離交通瀬野線。懸垂式モノレールっぽいロープウェイみたいなゴンドラ車両が高低差のあるニュータウンとJRの駅を結ぶ路線なんですが、この4月末に運行終了となります。 ↓

(写真:みどり口~みどり中街、2013.3)

開業は1998年8月、2024年4月までの26年間の運行となり少々もったいない系の設備投資となりました。 ↓

(写真:みどり中街~みどり中央、2023.5)

このスカイレール、積水ハウスが中心となった「スカイレールタウンみどり坂」という大規模開発団地と最寄り駅をつなぐ交通機関として新設されたもの。不動産開発を鉄道とセットでという、千葉の山万みたいなスタイルだったんです。 ↓

(写真:みどり中央~みどり中街、2023.5)

平地が少ない広島都市圏での新規宅地開発は丘陵地がメインとなってしまうため、いっそ高低差が少ない山を削って山上中心にニュータウン作ってしまえっていう発想で作られたところ。同じ積水ハウスが開発したJR中央本線四方津駅北のコモア四方津のスケールアップ版というところでしょうか。ただコモアは駅とニュータウンの接続を長いエスカレーターでつないでます。 ↓

(写真:みどり口~みどり中街、2023.5)

このスカイレール、JR駅があるところから団地中心部まで高低差160m、距離は1.3kmなんで路線の勾配はかなりのもの。 ↓

(写真:みどり中街~みどり中央、2023.5)

なんとなく高低差をわざと意識した湘南モノレールのような感じでもあるのかな、でも車両はゴンドラって感じなので見た目も乗る車両もほぼロープウェイ。 ↓

(写真:みどり中央~みどり中街、2023.5)

これ、当時の神戸製鋼所と三菱重工業が中心となって開発した新交通システムの1つとして「スカイレール」という名の鉄道システムとして売り出したんですが、このあと他で採用されることなく、ここ広島でのみの実績となってしまいました。 ↓

(写真:みどり口~みどり中街、2023.5)

実証試験と宣伝兼ねて施設自体はかなり格安に提供されたんでしょうねえ、ただ他に導入企業がなかったから更新時期を迎えた最近になって「新車はすべてオーダーメイドになるので高額請求」「改造/保守したくとも部品もない」などなど、特殊システムあるある話となって廃止が決定となったとのことで・・・ ↓

(写真:みどり中央~みどり中街、2023.5)

ゴンドラそのものは汎用品でしょうけど、レールにつながるアームのところとか、駅付近の低速走行用でのリニア駆動とか、それらまとめて無人運転っていう、システム全体も少々複雑そうなんで、車両更新となると設備そのものだけでなくソフトウェア類もいじらないといけないだろうから結構コストかかるんだろうなあ。 ↓

(写真:みどり中央~みどり中街、2023.5)

どこかの動物園のモノレールと同じような話ですねぇ、黎明期のシステムを採用するって、あとで負け組になる可能性もあるよってのがあって、まあ仕方ないことなんだけどね。 ↓

(写真:みどり中街~みどり中央、2023.5)

それに赤字経営だったということで、巨額な追加更新投資するならこのタイミングで廃止したほうが将来のためになるってことになったんでしょう。そもそもスカイレールサービスって会社、積水ハウスの連結子会社なんで、上場企業で収益アップとならない投資なんか株主は絶対認めないから、更新とか刷新とか、ここではあり得ないことだったんでしょう。 ↓

(写真:みどり中街~みどり中央、2023.5)

みどり坂の団地住民も停留所が多いEVバスのほうが便利になるだろうし、運営側も団地の平均年齢も上がってきて通勤通学需要なんかも減ってくるだろうから、今更大投資して住民負担が増えてもってのもあるしね。 ↓

(写真:みどり口~みどり中街、2023.5)

同じような開発手法だった山万のほうは非上場でかつ開発規模が大きくてかなりゆっくり。一気に開発すると投下資金を早くに回収できるけど、街自体は住民が子育て世代中心となって住民年齢が均質化、子供が社会人になり親が定年するころになると衰退が加速って問題がある。まさにみどり坂はこれからそういう時代になるってところなんだろう、いいタイミングでのEVバス化なのかもしれない。 ↓

(写真:みどり中街~みどり中央、2023.5)

ってなことで4月末で廃止とはなってしまいますが、設備類、特に駅はかなりしっかり作っちゃってて・・・ ↓

(写真:みどり口、2023.6)

JR駅側のみどり口駅はホームは乗降口それぞれ1カ所ずつ、ゴンドラ1両分のみでいいとはいえ、ゴンドラ自体は多頻度運転を考えて箱根ロープウェイみたいにバックヤードへ入って車両がループしてくるくる回ってくる仕組み。だからエンド部の駅構造は結構大きな箱。 ↓

(写真:みどり口、2023.6)

中間駅のみどり中街も無人駅でゴンドラ1両分の乗降口だけど設備は鉄道駅仕様。それに駅前後のリニア駆動部分はメンテがたいへんそう。 ↓

(写真:みどり中街、2023.5)

駅中はスカスカなんだけどホームドア設置、自動改札ありという代物。 ↓

(写真:みどり中街、2023.5)

山上にあるみどり中央駅もみどり口と同じような仕様でデカいがたい。施設撤去時には取り壊すのかな。まあ、今もみどり中央駅まわりにはコンビニすらないから、人が集まる場所って感じにもなってないからどうなるんだろうな。 ↓

(写真:みどり中央、2023.5)

ってことですが、最終運行まであと1週間ほどとなりました。最近はお名残乗車が増えているようで、平日朝ラッシュ後午前とか比較的空いてる時間狙いのほうがいいかもしれません。新交通としての発想はよかったんですが世界に広まらずガラパゴス化したのが災いしたのかな、静かに幕を閉じそうです。 ↓

(写真:みどり口~みどり中街、2023.5)